プロフィール

はじめまして。言語聴覚士として、病院、クリニック、介護施設での勤務経験を持ち、様々な職場環境でのリハビリテーション業務に携わってまいりました。この多様な経験を通じて学んだことを、同じ言語聴覚士として働く皆さんに共有していきたいと思い、このサイトを立ち上げました。

私が言語聴覚士を目指したきっかけは、学生時代にボランティア活動で出会った失語症の方との出会いでした。脳梗塞の後遺症で言葉を失ってしまった方が、懸命にコミュニケーションを取ろうとする姿に深く感動し、「この方の言葉を取り戻すお手伝いがしたい」という強い思いを抱いたのが始まりでした。

国家資格取得後、最初に勤務したのは総合病院のリハビリテーション科でした。急性期から回復期まで幅広い患者さんに対応する環境で、言語聴覚士としての基礎を築くことができました。ここでは、脳血管障害による失語症や構音障害、嚥下障害の患者さんを中心に、集中的なリハビリテーションを提供していました。チーム医療の一員として、医師、看護師、理学療法士、作業療法士などの多職種と連携しながら、患者さんの回復を支援する経験は、私の専門職としての基盤を形作る貴重な時間でした。

その後、より個別性の高いリハビリテーションを提供したいという思いから、クリニックでの勤務を選択しました。外来リハビリテーション中心の環境では、患者さん一人ひとりとじっくり向き合う時間を確保でき、長期的な関係を築きながら支援することができました。ここでは、失語症だけでなく、発達障害のお子さんや、高次脳機能障害の方々とも関わる機会が増え、言語聴覚士としての専門性を広げることができました。

現在は介護施設でも勤務しており、高齢者の方々の維持期リハビリテーションに携わっています。認知症の進行予防や、嚥下機能の維持・改善を目的とした支援を行っています。ここでは、医療機関とは異なり、生活の場でのリハビリテーションという視点が重要になります。利用者さんの日常生活の質を向上させるために、介護スタッフや家族との連携も欠かせません。

このように様々な職場を経験する中で、最も感動するのは、失語症の方が少しずつ言葉を取り戻していく過程に立ち会える瞬間です。最初は「あー」「うー」といった音しか出せなかった方が、数ヶ月のリハビリテーションを経て、家族の名前を呼べるようになったり、簡単な会話ができるようになったりする姿を見るたびに、この職業を選んで本当に良かったと実感します。言葉を取り戻すということは、その方のコミュニケーション能力を回復させるだけでなく、人としての尊厳や生きる喜びを取り戻すことでもあるのです。

また、お子さんの発達支援においても、初めて意味のある言葉を発した瞬間や、コミュニケーションが取れるようになって笑顔が増えた時の家族の喜びを共有できることは、言語聴覚士冥利に尽きる体験です。これらの経験が、私自身の成長と、この職業への情熱を支え続けています。

しかし、言語聴覚士としてのキャリアを歩む中で、様々な悩みや課題にも直面してきました。職場選びで迷った時期、給与や待遇に不満を感じた時期、専門性をどう高めていけばよいか分からず悩んだ時期など、多くの言語聴覚士が経験する共通の課題に私自身も向き合ってきました。

転職を考える際には、それぞれの職場の特徴や求められるスキル、キャリアパスの違いを十分に理解することが重要だと学びました。病院では急性期医療の知識と迅速な対応力が求められ、クリニックでは患者さんとの長期的な関係構築能力が重要になります。介護施設では、高齢者ケアの視点と多職種連携のスキルが必要です。それぞれの職場で求められる能力は異なりますが、どの環境でも共通して重要なのは、患者さんや利用者さんに寄り添う姿勢と、常に学び続ける意欲です。

このサイトでは、そうした私の言語聴覚士のキャリア形成の実体験を通じて、同じようにキャリアに悩む言語聴覚士の方々に向けて実践的な情報を解説していきます。職場選びのポイントから、給与アップのための交渉術、専門性を高めるための学習方法まで、幅広くカバーしていく予定です。

特に重視したいのは、実際の体験談に基づいた具体的なアドバイスです。転職活動での面接対策、各職場での働き方の違い、研修や学会参加による専門性向上の方法、ワークライフバランスの取り方など、理論だけでなく実践的な内容をお伝えしていきます。

言語聴覚士は比較的新しい職業であり、まだまだ社会的認知度も高くありません。しかし、超高齢社会を迎えた日本において、コミュニケーション支援や嚥下機能支援の専門家である言語聴覚士の役割はますます重要になっています。この素晴らしい職業に携わる一人でも多くの言語聴覚士が、より充実したキャリアを築けるよう、このサイトが参考になれば嬉しいです。

皆さんと一緒に、言語聴覚士としての可能性を広げ、患者さんや利用者さんにより良い支援を提供できるよう、情報共有を続けていきたいと思います。